指定調査機関が考える土壌汚染制度と中小事業者の課題
市街地土壌汚染の健康リスクを管理する土壌汚染対策法は、水質汚濁防止法や下水道法に基づく有害物質使用特定施設を有する事業者の場合、施設の廃止時の調査、その後の法手続きは事業者の規模に関わらず原則対応しなければなりません。しかし、土壌汚染調査や対策の費用負担は軽いものではなく、資金的に厳しい中小事業者では大変大きな負担となるケースが少なくありません。こうした状況を見てきた土壌汚染対策法に基づく指定調査機関はどう見ているのか。中小事業者の調査・対策に携わってきた指定調査機関に、中小事業者が制度に基づき対応するにあたっての課題や課題を解消するために必要だと考えることを聞いた過去の取材から紹介します。
(守秘義務等があるため指定調査機関名等も匿名としています)
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◆土壌汚染調査完了前に事業所代表死去で清算人となった配偶者の苦悩◆
Q.中小事業者が土壌汚染対策法など精度に基づき調査・措置を行う際に、「これは厳しい…」と感じたケースを教えてください。
A.ある小規模メッキ事業所が事業を清算するにあたり、土壌汚染について相談を受けたケースがあります。土対法3条の調査に着手したところ、事業所の代表者が調査完了を前に他界し、配偶者が清算人となりました。
当時、3条調査の120日以内報告に例外はなく、代表者死去の混乱の中で、清算人を励ましつつ行政に調査報告し区域指定を受けました。
事業所は高地価エリアにあり、指定解除後に土地を売却して清算できましたが、清算額の半分以上が土壌汚染対策費用となりました。清算人となった配偶者は、経済的にも苦しみましたが、自死を考えるほど精神的に追い詰められている姿を見た時は、つくづく考えさせられました。
◆事業規模で天地の差がある土壌汚染調査・対策◆
Q.中小事業者が土壌汚染調査・対策を行う流れの中で、制度的なことを含めて何が課題と感じますか。
A.そもそも、大企業における土壌汚染の問題が、土壌汚染対策法の必要を喚起した背景があり、当然にして制度は必要だと考えていますが、広大な土地の一部が調査対象地だったり、事業継続は将来において約束されているため、3条ただし書きの調査猶予を受けて、調査すら実施しないケースもあります。この場合、企業が受けるダメージは小さく、土壌汚染対策が原因で倒産した大企業はないと承知しています。
一方、小規模クリーニング事業所など小規模事業者では、事業者の高齢化によって事業所を廃止する場合など、全敷地が全部対象区画になることは少なくありません。土地の売却で制度の義務を果たせればまだ良い方ですが、低地価であれば問題を解決できません。
法や条例などを前に、事業規模に関わらず、土地の汚染が許されるものではありませんが、事業規模における実態には、天地の差が存在しています。
◆資金繰りの中で対応できる操業中の定期的調査、状況に応じた指導の義務化を◆
Q.事業規模における実態の差を解消していくために必要なことは何だと考えますか。
A. 現行の制度では、汚染が拡大する可能性があるにもかかわらず、操業中の調査が義務化されていないため、最悪な汚染状況で廃止時に対応しなければなりません。
事業継続中であれば、モチベーションも維持できるし、資金繰りの中でできることをしていけば良く、廃止時の費用負担も顕在化され、問題解決についての備えもできますので、土壌汚染リスクのある事業所では、操業中に定期的な調査を義務付け、状況に応じた指導を義務化することが肝要と考えます。(終わり)
※同記事の指定調査機関と同記事に広告を掲載している企業とは関係がありません。
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