【2023年夏特集③】浄化難しい土壌でも効率的な有害物質の除去を可能にした「電気発熱法ハイブリッド土壌浄化工法」

◆国際航業が注力する原位置浄化技術◆


東京都が中小規模事業者の土壌汚染対策支援を行う方針とする中、注目される対策工法の1つが「原位置浄化工法」です。原位置浄化工法は、汚染土壌を掘削して清浄土と入れ替える対策と違い、薬剤等を現地に投入することで有害物質を分解するなどして無害化するものです。掘削して除去する工法に比べ対策費用を抑えることが可能になる一方、浄化に時間を要することなどが課題とされていますが、近年では浄化時間を短くする技術開発も進んでいます。その中でも注目されるのが、国際航業(東京都新宿区北新宿2-21-1、土方聡社長)の「電気発熱法ハイブリッド土壌浄化」です。効率的な有害物質の除去が可能になるほか、従来工法では難しかった粘土層での浄化も可能にした画期的な技術です。国際航業が展開する「電気発熱法ハイブリッド土壌浄化」とはどのようなものか、紹介します。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆土壌自体を発熱させ、均一に加温…浄化難しい粘性土での高い浄化効果◆


「電気発熱法ハイブリッド土壌浄化工法」は、土壌加温と地下水の揚水、ガス吸引、水蒸気回収や生物・酸化分解などの浄化工法を組みわせたもので、2014年から国際航業が開発を進めてきたもの。一般的な原位置浄化技術では浄化が難しい粘土層に浸透したVOC類の浄化ができるだけでなく、難分解性の有害物質も原位置で化学的に分解可能とする技術です。

それぞれの技術の特徴を見ると、土壌加温システムは、地盤に電極井(直径50㎜程度の鋼管)を挿入し、電圧をかけ土壌自体をジュール熱により発熱させます(電気発熱法)。これにより土壌を30~80℃に加温することが可能です。土壌自体を発熱させるため、ヒーターやスチームなどほかの加温法に比べて、均一に加温でき、温度コントロールが容易、電気代が安いほか、電気抵抗の低い粘土層に電気が流れやすく昇温しやすいなどの利点があります。これにより、粘性土の粒子間に吸着しているVOC類の地下水への溶出や気化を促進させるほか、加温によるガス圧の上昇、水の粘性低下による移動性の向上などの効果を生みます。


◆加温して溶出してきたVOC類を酸化分解◆


こうして電気発熱法により地下水などへ溶出してきたVOC類を物理的に回収するだけではなく、国際航業がノウハウを持つ過硫酸ナトリウム等による酸化分解工法を組み合わせ、分解効果を大幅に加速させることも大きな特徴になっています。

これまでに実際の汚染現場で数多く実績を残しており、トリクロロエチレン(トリクレン)やベンゼンなどのVOC類の浄化に大きな効果を発揮しています。


◆1,4-ジオキサン浄化技術で特許取得…PFOS等浄化技術の特許も出願◆


同社ではこの「電気発熱法ハイブリッド土壌浄化工法」をさらに進化させ、難分解性の1、4-ジオキサンや有機フッ素化合物(PFAS)等の浄化にも活用を進めています。

1、4-ジオキサンやPFOS及びPFOA等は、土壌にとどまらず水に溶けて広範囲に広がりやすい性質があるほか、比重が重く深い場所に移動しやすい傾向があります。例えば、PFOS及びPFOA等は水道水源に使用される深井戸から暫定指針値を超える値で検出されていることからもその傾向が読み取れます。

これら物質は、一般的な酸化・還元法などの適用は困難であり、土壌は掘削・焼却処理、地下水は揚水処理が現状となっていますが、土壌温度の上昇により、土壌間隙水自体の移動性が向上することで土壌浄化が促進されるため、同社は1、4-ジオキサンやPFASについても電気発熱法ハイブリッド浄化の応用を検討してきました。

1、4-ジオキサンやPFASは通常の過硫酸ナトリウム工法のみでは結合が切れず、浄化は難しいですが、電気発熱法による加温で硫酸ラジカルを発生させることができ、分解効果が得られるとしています。

1、4-ジオキサンについては、これまでの成果の中で、過硫酸ナトリウム単独による酸化工法と比較して最大で通常の10分の1の添加量で1,4-ジオキサンを分解できることなどが分かっています。なお、1,4-ジオキサンを対象とした熱活性過硫酸による土壌・地下水浄化技術について、国際航業はすでに特許を取得(特許第6825179号)しています。

さらに、PFASについても土壌汚染に対する熱活性過硫酸の効果を検証するため、実汚染試料を対象に試験を実施。実汚染土壌200gに20%過硫酸ナトリウム溶液20ml添加し、60℃で10日間養生。同量の過硫酸ナトリウム溶液を再添加。10日間養生後にPFASのうち、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)/PFOA(ペルフルオロオクタン酸)の土壌溶出量及び土壌含有量を測定した結果、PFOAに対しては、有意な低下を確認したとしている。一方、PFOSについては適切な温度帯が異なるなどし、効果は限定的だったとしていますが、80℃程度の加温試験等を通じて最適な対応策を今後も検証していく方針としており、今後の成果が注目されています。

「電気発熱法ハイブリッド土壌浄化工法」はじめ原位置浄化の効率化には、見えない地下の状況を把握することが大切ですが、国際航業では、三次元可視化モデルなどを用いた浄化対策の見える化(CSM:コンセプチャルモデルの構築)も進めており、組み合わせることで「これまで以上に幅広い層に電気発熱法ハイブリッド浄化技術の有効性を理解してもらうことが可能になります」としています。

電気発熱法ハイブリッド土壌浄化工法はコスト低減が可能であり、中小事業者でも採用がしやすくなるほか、重機や土壌搬出用車両を多く使う掘削除去に比べると温室効果ガスの排出量を大きく削減できることから大きな関心を集めています。


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