【株式会社エイチテック社名変更20周年記念特集】株式会社エイチテック代表取締役・岡田宏氏に聞く
土壌汚染調査を確固たる事業に育てた20年
土壌汚染対策法に基づく指定調査機関として土壌汚染調査で活躍する株式会社エイチテック(広島県福山市川口町1-16-35、岡田宏代表取締役)は昨年、社名変更して20周年を迎えました。2004年に代表取締役に就任した岡田代表取締役は当時、社名変更とともに公共事業主体のビジネスから民間中心の土壌汚染調査への転換を決め、この20年で土壌環境調査を確固たる事業に育て上げました。同社のこれまでの20年と今後の展望について岡田宏代表取締役に聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)
◆2004年に社名変更…公共事業から民間事業にシフト◆
――岡田様が代表取締役に就任し、社名も株式会社エイチテックに変更をして20年が経過しました。会社を継ぎ、土壌汚染調査を軸にした事業に転換した当時の話を聞かせてください。
「まず初めに当社事業を支えてくださった発注者の皆様、同業の皆様に深く感謝申し上げます。さらに、苦しい時期もありましたが、会社を支えてくれたスタッフ、当社事業の発展を支えてくれた三光グループにも深く感謝の意を伝えたいと思います。
当社が社名変更、新規事業のスタートから20年を迎えられたのも多くの皆様の支援があったからこそです。これからも感謝の気持ちを忘れずに邁進していきたいと思っていますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
当社は、先代が立ち上げた平和地下開発株式会社が前身となります。広島県東部地方を中心に地盤工学のパイオニアコンサルタントとして、また溜池のグラウト工事、さく井工事などの自然との調和を大切に考える建設工事を主体とし、1963年創業以来長く土木建設の分野で社会資本の充実に寄与してまいりました。
2004年に私が代表取締役を引き継ぎ、土壌汚染調査・対策事業を立ち上げ、株式会社エイチテックへと社名を改め、新規事業として環境調査事業に乗り出そうと思いました。
私が引き継ぐ前後、当時の小泉政権の下、聖域なき構造改革の一環として行われた三位一体の改革で国の補助事業が大幅に見直し・縮小され、それまで主力であった地質調査など公共事業が厳しい状況を迎えていました。
当社でも受注環境が厳しい状況となる中、2003年に市街地土壌汚染を対象とした『土壌汚染対策法』が新法として施行され、土壌汚染を巡る調査や対策への関心が高まっていました。
そこで、これまでの経験を生かせる土壌汚染調査を新たな柱とすべく取り組むこととしました。
ちなみに『H-TECH』という社名は、Hが前社名の平和地下開発、Tがテクノロジー、Eがエンバイロンメント、CがCSRやコンプライアンス、チェンジ、チャレンジの4つのCなどを繋げたもので、技術力で環境問題に取り組むという意思を込めた名前になっています」
◆経験のない分野への挑戦…セミナーから始め中国地方初のエコプローブ機導入◆
――従来の公共事業主体のビジネスから民間事業主体へと転換するのは大変だったのではないかと思いますが、どのような取り組みを進めてきたのですか?
「土壌汚染調査を始めたいと言った当時は当社で経験のない分野であり、社内でも賛同者は少なかったですね。
かくいう私も当初は土壌汚染調査について何も知らず、手探りでした。新規事業に取り組みたい人を募った結果、私を含めて3名でしたが、その3名で環境事業部をスタートさせました。
右も左も分からぬ中、手探りで最初に取り組んだのが、2004年9月、地元・福山市内で宅建事業者向けの土壌汚染セミナーでした。会場は満員となり、予想以上の反響があったことからその後、広島市、岡山市、鳥取市など近隣地域でも土壌汚染セミナーを開催し、土環境事業に活路があるという手応えを得ました。
ちなみに、セミナーを開催すると決めたものの、社内に詳しい者はいないので、講師をお願いしたのが、のちに当社顧問をお願いすることになる協同組合地盤環境技術研究センター(GETReC)の故・西田道夫さん(2024年没)でした。
セミナーの反応は良く、開催翌日には記念すべき第1号となる表層土壌調査を受注しました。当時は資機材も揃っていない状況で、ダブルスコップなど必要な道具を急いで購入しましたね。
また、同時期にすでに土壌汚染調査の需要が広がり始めているという関東地方に1週間おきに営業で出向きました。飛び込みで様々な会社に営業をかける中で、今後さらに需要が増えることを肌で感じました。
当初は土壌調査用のボーリングマシーンもない状況でのスタートでしたが、セミナー講師をお願いした西田氏を通じて『SCSCネットワーク』、ボーリングメーカーの東亜利根ボーリングを通じて『エコプローブ協会』と繋がりを持つことができたことで、土壌環境調査事業の世界をさらに広げることができました。
土壌環境調査用ボーリングマシーンとして業界でも話題になっていた『エコプローブ』(東亜利根ボーリング社製)はすぐに発注し、翌年2005年春に中国地方で初となる『エコプローブ』が納入されました。
それ以降、短期間のうちに台数を増やし、2年程度で4台体制を整えたこと、土壌環境調査事業開始から2012年頃まで積極的に飛び込み営業を続けて当社を知ってもらうことで、土壌環境調査事業は順調に成長していきました。
現在では、土壌環境調査用としては『エコプローブ』や『ジオプローブ』(ジオプローブ社製)など15台のボーリングマシーンを保有していますが、おかげさまで途絶えることなく土壌汚染調査業務を受注させていただいています。
また、『エコプローブ』を保有する企業が集まる『エコプローブ協会』に加盟したことも事業が発展していく上で大きなポイントになりました。『エコプローブ協会』が掲げる「技術力の向上」は、業界内の信頼を得ていく上でも極めて重要な方針です。
当初は新参者でしたので技術的なことなどを指導いただき、当社スタッフの技術力向上に繋がりました。さらに、同業の仲間とのつながりは土壌環境事業を拡大させていくために必要不可欠な絆であり、今後も大事にしていかなければならないと思っています」
◆土壌汚染問題への意識を身近にした「土壌調べ隊」◆
――PR活動も積極的でした。当時、『土壌調べ隊』というツールも話題になりました。
「2004年当時、土壌汚染問題を知らない人も多かったので、まずは知っていただく機会として簡易土壌診断キットを『土壌調べ隊』と名付けてスタートしました。
土壌汚染対策法が施行された中、『自宅の土壌は大丈夫だろうか?』という声も出ており、家庭でも簡単手軽に自分の土地が汚れていないかを健康診断できるものとして始めたものです。家庭で菜園をしてみたいという方々も少なくなかったので、反響は大きかったですね。
公定法に基づいたものではありませんが、お客様自身が採集して当社に送っていただいた土壌を分析して汚染の具合を4段階で判定して報告書としてお伝えするもので、高い関心を集め、メディアからも数多くの問い合わせをいただきました。経済系のテレビ番組ではスーパーゼネコンさんの取り組み等と並んで紹介してもらい、大きな反響がありました。
現在でも継続していますが、一般家庭等だけでなく、自社敷地に土壌汚染の可能性があるかどうかを知りたいという企業のニーズにも応えるツールとして利用していただいています。この『土壌調べ隊』をきっかけに実際に土壌サンプルを採取する土壌汚染調査等へ繋がることも少なくありません。『土壌調べ隊』自体の利益はほとんどありませんが、広告ツールとして大きな役割を果たしてきてくれました」
◆環境事業部門順調も全社的には厳しい時期も乗り越えて◆
――土壌汚染対策法の施行とともに土壌環境ビジネス自体が初期の頃は、『土壌汚染バブル』と言われるほど活況を呈しましたが、貴社の事業はどのように推移しましたか?
「2004年に環境事業部を立ち上げて以降、福山市にある本社をベースに事業拡大を図りました。環境事業部と同時に総合研究所(土質試験室)も立ち上げました。
2005年には資本金を増資し、2007年には環境マネジメントシステムの国際規格『IOS14001:2004』も取得しました。
環境事業部立ち上げからここまでは好調な土壌環境市場とともに受注高も上昇を続け、人材も中途採用で増やすことができ、順調に伸びていきました。
しかし、世界的な金融・経済危機となった2008年9月のリーマンショックを契機に日本でも土壌環境市場が急速に低迷し、当社も一時的に非常に厳しい状況に直面しましたが、当社の受注環境は思っていたよりは早く回復しました。2010年には土壌環境調査の受注件数は以前の水準に戻りました。
ただ、同時期に建設コンサルタント部門において指名停止を受け、社全体の売り上げが落ち込んだ時期があり、これは非常に厳しかったですね。当時の関連会社である株主等からも厳しい目を向けられていました。株主間でも様々な意見があり、金融機関等との関係も難しく、自立の道を歩もうとするにも非常に苦しい時期を過ごすこととなりました。
そうした中で新たなパートナーシップ関係を構築する旅が始まりました。この間も環境事業部門は利益を上げていましたが、全社的には厳しい時間でした。
こうした中、2015年に廃棄物処理業の大手である三光株式会社と資本・業務提携契約を締結し、三光グループの一員として参画することになりました。
当社の土壌環境調査・対策事業と三光の廃棄物処理事業を組みわせたシナジー効果を期待してのグループ参加でしたが、これが非常に良い効果を生み出し、グループ参加後数年で当社の売り上げは倍増することとなりました。従来は土壌汚染調査事業が中心でしたが、グループ参加後、油含有土を対象とした定置型のバイオ浄化処理事業に乗り出したことも大きな変化となりました。
2016年1月には沖縄営業所、同年4月には三光グループの東京本部設置に伴い当社も東京本部を設置することとなりました。さらに、同年9月には土壌汚染対策法に基づく指定調査機関となり、2017年10月には三光グループの地元・鳥取県米子市に当社米子支店も開設しました。
2018年12月には東日本における機材の拠点となるテクニカルセンターを埼玉県川越市内に設け、広島を中心としながら、東京本部、さらに地方営業所を開設したことで、全国各地で土壌汚染に関わる問題に対応可能となりました。
また、土壌環境事業だけでなく地域防災にも寄与する『防災井戸』にも取り組んできました。相次ぐ災害の中で、水道インフラが被災して断水が続くケースが多く見られました。こうした状況を踏まえ、防災井戸の需要が増すことと、当社が保有する自走式の掘削機は井戸を素早く仕上げることも可能であることから、需要が増す可能性のある防災井戸の築造に役立てることができると考え、取り組んでいます。すでに、地域貢献したいと考えている地方金融機関等における防災井戸の工事等も受注してきました。今後も防災井戸の役割はさらに増すと思っており、注力していきたい分野の1つだと考えています」
◆環境事業部門は順調も今後も手を抜くことなく取り組んでいきたい◆
――現在のエイチテックをどのように評価していますか?
「当社が手掛ける土壌環境調査・対策事業は、民間の不動産取引市場の動向等によって大きく左右される不安定な市場で一筋縄にはいかず難しい部分もありますが、土壌汚染調査事業の方はボーリングマシーンも揃っておりブランド力は相当高くなっていると自負しています。おかげさまで業界の信頼も得ており、順調だと思っていますが、今後も手を抜くことなく取り組んでいきたいと思っています。
現在も引き合いは途切れず、現場の班数を増やせばさらに受注件数は増やせますが、業界他社と同様に人材確保が課題になっています。
先般、外国人を採用したところですが、今後も機会があれば外国人を含めて積極的に人材を確保していきたいと思っていますし、同業他社の中から協力会社を増やし、当社のノウハウを共有することで受注環境を整備していくことも念頭に進めていきたいと考えているところです。
一方、売上が大きい土壌汚染処理事業の方は、受注できれば大きいので今後いかに対策工事の受注を増やすかがポイントになっています。グループ会社が廃棄物処理を行っていますので、相乗効果も期待できますが、こちらも対策現場の管理をできる人材が少ない点が課題となっており、人材をいかにして確保して育てていくかが今後の焦点になっています」
◆短期的目標で土壌汚染調査会社として受注件数日本一を目標に◆
――今後の方針や岡田代表取締役が描く未来のエイチテックとはどのようなものですか?
「経営計画でも明記しましたが、短期的な目標として当社は土壌汚染調査会社として受注件数日本一を目指します。これが直近の目標です。
中長期的な目標については、現在進めている後継者の育成にかかってきます。私自身、60歳で引退したいと思っており、後継者の育成は進めてきましたが、10年後の目標は次の経営者に委ね、思う通りにやって欲しいと思っています。
私は今後、次期経営者が不安なく目標に向かっていけるための資金や人材など環境を整えていきたいと考えています。
当社はこれまでの20年も『平和な環境社会への貢献』に挑戦し続け、人々の暮らしと地球の環境を守る架け橋になれるよう日々精進してきましたが、今後の20年もその理念に基づいた会社であり続けたいと思っています。
最後になりますが、新規事業立ち上げ時期より𠮟咤激励をいただき、当社を支え続けてくださいました故・西田道夫様に心より感謝いたします」
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■社員が見るエイチテック■
環境事業部長・今井禎宏氏(右)
技師・中馬究氏(左)
土壌汚染対策法に基づく指定調査機関として土壌サンプリング調査で数多くの実績を積んできた株式会社エイチテックは、スタッフの丁寧な仕事が高く評価されています。社名変更以降、同社の事業を支えてきた社員は自社をどのように評価しているのか。50代代表で同社環境事業部長の今井禎宏氏(写真右)、30代代表で技師の中馬究氏(写真左)の世代の違う2人に話を聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)
◆早さよりも質を求める◆
――土壌サンプリング調査で業界でも立ち位置を確立している御社ですが、社員から見た強みをどのように考えていますか?
今井「当社は広島県福山市に本社がありますが、東京本部や各営業所を起点に全国どこでも対応できる体制があることが強みの1つです。
土壌環境調査用の掘削機が揃っている点も大きな強みです。『エコプローブ』が7台、『SP-50』が3台、『SP-8000』が1台など揃っています。これらの機種により大型の案件はもちろんのこと、『EP-10』のような小型機もあり室内や小規模案件にも対応できます」
中馬「ホームページを見ていただければ分かると思いますが、全国無料相談にも応じており、費用の面でのご相談にも対応させていただいている点も強みだと考えています。
また、当社の業務は『速さ』ではなく『品質』を求めています。ご利用いただいたお客様からも現場がきれいである点を評価していただいている点も強みだと思います。その点を高く評価いただいており、リピーター様が多いことも特徴ですし、リピーター様から他社を紹介いただけることも多い点も特徴です」
◆風通しの良い社内◆
――土壌汚染調査の仕事も途切れることなく受注している御社ですが、社内の雰囲気はどう感じていますか?
中馬「職人気質の強い人が多いボーリング業界では上下関係が厳しいケースも多く見受けられますが、当社は上下関係がそれほど厳しい印象はないです。若手が先輩にアドバイスを聞きやすい環境ですし、若手が意見を言える環境もあります」
今井「現場での技術等については長年の経験で自信をもって業務に臨みますし、若手にも積極的に技術を伝えられる雰囲気だと思います。逆に、年齢の高い私はデジタル化などで分からないことも多くありますが、中馬をはじめ若い仲間に気軽に話を聞いています。
経営陣も現場の声をよく聞いてくれますし、困りごとなどに対して素早く対応してくれるので大変助かっています。例えば、当然のことながら機械も経年劣化して不具合が出ますが、相談するとすぐにメーカーとの調整などを進め、現場が困らないように手配してくれます。
一言で言えば『風通しの良い職場』と言えますね」
――20年で業界でも名の通る会社となりましたが、今後どのようになって欲しいと感じていますか?
今井「時代が変わってもこれまで通り品質にこだわる風土は変わらないでいって欲しいですね。また、社内も今の雰囲気のままでいて欲しいと思います。
今後はさらに時代のニーズに対応していく必要があり、当社でもデジタル化が進んでいます。私のような50代の人間もこうした流れにもっと対応していかなければなりませんが、中馬のようなデジタル化に詳しい若手がいて困ったことがあれば気軽に聞ける点は心強いです」
中馬「今井が話したことと同じことになりますが、社風等は大切にしていきたいですね。
また、時代のニーズへの対応は重要だと考えています。DX(デジタルトランスフォーメーション)化が進むことで、例えば現場写真等の管理も現場と社内で瞬時に共有化でき、不足している点等を補うことができます。今後はAI(人工知能)等をいかに活用していくのか?という点も重要になってくると思いますが、現場からも積極的に提案していければと思っています」
今井「土壌汚染調査の業界も始まった頃からずいぶんと形が変わってきましたし、今後も変わっていくでしょう。当社はそうした変化の中で成長してきました。今後も業界をリードしていける会社だと思っています。
今後、どのような変化があるのかは分かりませんが、良いものは柔軟に取り入れていく姿勢は組織としても個人としても大切にしていきたいですね」(終わり)
※記事中の人物写真はECO SEED撮影、その他写真は株式会社エイチテック提供
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