2026年連載企画:土壌汚染に関する土地情報把握の行方②
第2回 地歴調査とは~地歴調査の基礎知識
地歴調査とフェーズ1調査の違いについて
トランスバリュー・リアルエステートサービス株式会社 代表取締役 安田晃
◆地歴調査とフェーズ1調査は厳密には違う!?◆
土壌汚染状況調査の第一ステップである地歴調査に関して、環境業界だけでなく、不動産業界内ではフェーズ1調査と呼ばれることがあります。
地歴調査もフェーズ1調査も第一ステップであることには違いはありませんが、基準・仕様やそもそもの目的が異なっている点は認識しておくべきと思います。
◆地歴調査とは◆
最初に地歴調査ですが、基準・仕様は土壌汚染対策法のガイドラインに従っているものであり、目的は土壌汚染対策法の土壌汚染状況調査における試料採取等調査計画策定のために行われるものです。そのため、調査内容は「土壌汚染対策法の調査対象地における特定有害物質による土壌汚染のおそれを推定するために有効な方法を把握するための調査」であり、あくまでも土壌汚染対策法の土壌汚染状況調査の一部であり、特定有害物質の使用等の履歴がある土地(敷地内)を想定している点がポイントになります。また、調査対象項目は土壌汚染対策法で指定されている特定有害物質26物質です。
◆フェーズ1とは◆
次に、フェーズ1調査ですが、基準・仕様は2つあると考えられています。1つ目はBELCA(公益社団法人ロングライフビル推進協会)ガイドライン、2つ目は米国のフェイズⅠ規格(ASTM E-1527)やサイトアセスメント(ISO 14015)を参考にしたものです。ただ、目的はほぼ同じであり、リスク評価/REC(Recognized Environmental Conditions 有害物質等が土壌や地下水に影響を引き起こすような状態)の特定になります。
調査内容については、1つ目のBELCAガイドラインの場合は「エンジニアリング・レポート(ER)作成に係るガイドライン」で規定されている土壌汚染リスク評価であり、主に不動産投資・取引において行われる不動産デュー・デリジェンス(DD)の一環です。米国のフェイズⅠ規格(ASTM E-1527)の場合は、環境サイトアセスメントのプロセス(初期評価)であり、既存資料の調査、現地調査、面接調査を通じた汚染の有無の確認、汚染の程度の推定、修復の必要性等の初期調査に該当します。また、調査項目は土壌汚染対策法で指定されている特定有害物質26物質に加え、ダイオキシン類や鉱油類なども環境リスク項目ととらえ、評価対象になります。
したがって、普段使用されている地歴調査やフェーズ1調査の定義を理解したうえで、適切に使用されているか、しっかりと背景を把握しておくべきと思います。
◆他にも地歴調査やフェーズ1調査以外の表現方法はある!?◆
実は、地歴調査やフェーズ1調査という呼び方以外にもまだまだ別称が存在します。いくつか見ておきましょう。
例えば、「土地利用の履歴等調査」、「資料等調査」、「簡易地歴調査」、「フェーズ0.5調査」などが聞かれます。
「土地利用の履歴等調査」については、基準・仕様は東京都環境確保条例・土壌汚染対策指針であり、目的は土壌汚染のおそれの有無の評価になります。調査内容は過去の地形図、住宅地図、航空写真、登記簿その他の情報により、過去の特定有害物質の取扱事業場の設置状況等について把握する調査であり、表現は異なっていますが、土壌汚染対策法における地歴調査と重複する部分があります。また、調査項目は特定有害物質26項目です。
次に、「資料等調査」、「簡易地歴調査」、「フェーズ0.5調査」はいずれもフェーズ1調査などを参考にした名称であると言われています。調査目的も主にフェーズ1調査の必要性を判断するための評価であり、調査内容や仕様は調査会社ごとに異なっています。具体的には、収集する資料や情報を限定するのが一般的であり、机上調査(現地調査を実施しない)であったり、現地調査は(敷地外からの)外観調査のみであったりします。現況が工場や事業場という土地利用というよりは、住居系や商業系で、汚染のリスクが相対的に小さい案件の際に行われる調査のイメージになっています。
◆抑えておきたいポイント◆
地歴調査(フェーズ1調査等)の相談を受けた場合、調査の契機が義務(法令)か自主調査の種類により、調査内容(項目、期間、費用)が変わってくるため、法や条例に抵触するか否か、調査の契機の把握が重要になります。
自主調査の場合、売主側または買主側の目的や仕様によっても、調査内容が変わることもあります。
フェーズ1調査の評価結果は、各社により、評価基準や評価方法が異なることにも留意が必要です。
(評価例の比較)
・土壌汚染の可能性が極めて小さい。 ⇔ 土壌汚染の可能性が低い。
・もらい汚染には留意が必要である。 ⇔ もらい汚染の可能性は否定できない。
つまり、発注者や関係者が地歴調査(フェーズ1調査等)報告書をどのような目的で、どこへ報告・届出するかなど、背景をしっかりと抑えておくことが重要になります。
◆ケーススタディ◆
地歴調査の相談を受けたものの、調査契機(法令調査or自主調査)の確認が判断できない場合、どうしますか?どのような情報を依頼者にお願いしますか?
以下に、確認すべきポイントをまとめます。
・調査の契機・目的(工場廃止、建物新築、売買等)
・事業場内における特定施設の設置履歴の有無(水質汚濁防止法・下水道法・瀬戸内法)
土壌汚染対策法第3条に該当する可能性
土壌汚染対策法第3条第1項ただし書きの調査猶予を受けているか否か
・面積要件(敷地、形質変更面積)
土壌汚染対策法第4条(3,000㎡(900㎡)以上の形質変更)に該当する可能性
・各自治体における条例等の施行状況
土壌汚染対策法に該当しない場合でも、各自治体の条例等に該当する可能性
自主調査として進めている中で、後から、法令調査に該当することが分かった場合の時間や費用のロスは大きいため、調査担当者としては、しっかりとポイントを抑えておくことが重要です。
◆まとめ◆
普段、何気なく使用している「地歴調査」や「フェーズ1調査」ですが、詳しく解説している書籍や情報はほとんど見当たりません。そもそも2003年(平成15年)の土壌汚染対策法施行時には、土壌汚染対策法では「地歴調査」の定義付けが現在とは異なっていたため、地歴調査よりも「フェーズ1調査」が広まり、浸透したものと考えられます。
また、フェーズ1調査でリスクが発見された場合、「フェーズ2調査」(いわゆる土壌汚染状況調査)へ進んでいくことのイメージが付きやすく、関係者間での説明のしやすさ、などもあったのではないかと推測しています。
いずれにしても、調査実施者(主に指定調査機関)としては、地歴調査やフェーズ1調査などの定義の背景をしっかりと理解し、そのうえで、調査依頼者(ご発注者)に対して、あらかじめ適切な調査仕様、調査内容を説明できるようになっておくべきだと思います。
◆セミナーのご案内◆
2027年(令和9年)2月19日(金)に一般社団法人産業環境管理協会主催の「土壌・地下水汚染に関する基礎セミナー」基礎2部:実務編 セミナーが開催されます。
https://www.e-jemai.jp/seminar/r8dojo.html
講義内容(予定)は以下の通りです。
●第1講義
土壌汚染対策法・関連法令のポイントとその運用 ~法第6条以降の詳細解説~
●第2講義
地歴調査の進め方 ~地歴調査の流れを各段階に分けて説明~
●第3講義
土壌汚染状況調査(人為由来) ~調査計画の策定
●第4講義
地下水調査について、自然由来の汚染について、調査や対策の制約、難しさについて
第2講義にて、地歴調査について私が解説いたしますので、ご興味のある方、勉強したい方は是非セミナーに参加してください。
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