【2025春特集①】2025年度土壌汚染対策法見直しの方向、地下水のPFAS対策の行方~環境省に聞く

環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室・鈴木清彦室長に聞く

土地所有者や水質汚濁防止法に基づく有害物質使用特定施設を保有する事業者にとって関心の高い土壌汚染対策法(土対法)の見直しが2024年9月から環境省の諮問機関・中央環境審議会において審議が始まっています。また、社会的関心が集まる有機フッ素化合物(PFAS)の地下水環境における対応の行方などにも大きな注目が集まっています。土対法見直しの過程におけるポイントやPFAS対策の現状などについて、環境省水・大気環境局環境管理課環境汚染対策室の鈴木清彦室長に話を聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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【土壌汚染対策法見直しの方向性】

◆複雑な制度の見直し、持続的な土壌汚染対策などポイントに◆

――土対法の見直しに向けた中央環境審議会での審議が進んでいます。これまでの状況はいかがでしょうか。

「中央環境審議会(以下、中環審)においては水環境・土壌農薬部会土壌制度小委員会(以下、小委)が設けられ、2024年9月18日の第1回会合では委員からフリーに意見をいただき、11月25日の第2回、12月2日の第3回では地方自治体や関係する業界団体計11団体のヒアリングが行われ、土壌汚染対策法(以下、土対法)見直しに向けた様々な意見をいただきました。2025年3月31日の第4回からは各論の検討が進められているところです。[A1]

その中環審での審議に先立ち、環境省では『土壌汚染対策法の施行状況等に関する検討会』を設置して検討を進め、2024年6月に「土壌汚染対策法の見直しに向けた検討の方向性」をとりまとめており、小委ではこの報告書で示された提言(以下、検討会提言)(https://www.env.go.jp/content/000252704.pdf )をお示ししています。

検討会提言では、『環境・経済・社会に配慮した制度・運用の合理化・分かりやすさの改善』、『土地の土壌汚染状況に関する情報の適切な管理、承継等の強化』、『関係事業者の質の持続的な確保等』が主な論点として指摘され、小委ではこの検討会提言をベースとして意見をいただいています」

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◆地歴調査の調査契機を試料採取等調査と分離の上で拡充◆

――これまでの小委における意見等のポイントはどう整理できますか。

「まず、制度が複雑になっている点について多くの指摘を受けています。土対法ではこれまでの施行状況を踏まえ、自然由来重金属類や臨海部における対応等様々なケースにも合理的に対応するための特例措置も講じてきました。その結果、制度として複雑な形になった部分があるとの指摘があります。

このため、自然由来特例区域等について法に基づく区域指定をしない制度等の検討を要望する声などをいただいています。しかし、自然由来だとしても基準値を超える有害物質を含む土壌が区域外に搬出され、搬出先で健康リスクを高める可能性はあり、区域指定しない形でどのように管理できるのか?という課題もありますので今後の小委での審議を深めていきたいと思っています。

土対法に基づく土壌汚染対策と地下水汚染対策の連携が不明確で不十分だという指摘をいただいており、今後の小委でも地下水汚染対策との連携強化等も検討を進めていきたいと思っています。

また、土壌汚染状況調査についても多くのご指摘を受けています。検討会提言において、地歴調査の調査契機を試料採取等調査と分離の上で拡充し、土地の所有者等の変更時に、調査結果の承継を強化する措置等が指摘されており、[A2]中環審小委第2回、第3回会合で行われた自治体や関係団体のヒアリングでも多くのご意見をいただいています。

例えば、『土壌汚染のおそれの早期把握、情報の散逸防止の観点から、調査の猶予なく、有害物質使用特定施設の設置者・土地所有者等が変更する際に地歴調査を実施するなど、調査契機の拡充を図るべき』や『地歴調査を“土壌汚染のおそれの区分の分類”まで入れることで、自治体・事業者双方にとって、見やすい・分かりやすい情報の管理を実現すべき』、『地歴情報の所有者間の承継義務化及び不動産ID等デジタル化を促し、国によるプラットフォーム等の整備・関与を検討すべき』[A3]といったご意見をいただいています。

さらに、将来の社会を見据えた持続可能な土壌汚染対策についても指摘も受けています。例えば、有害物質を使用していた施設があった土地でもその土地の土壌汚染状況に関する情報が残っていないケースがあり、土対法の手続きを進める段階で関係各方面が苦慮する場合があることから、土壌汚染状況に関する情報の承継のあり方等についての検討を要望する意見が出ています。また、脱炭素化が急務な中、土壌汚染対策では依然として掘削除去・場外搬出処理が多く、その工程における温室効果ガスの排出も課題として指摘されています。この点は民間の土地取引等の事情もあり、法で規定するのは難しい一面もありますが、検討会提言において『持続可能な土壌汚染対策を総合的に推進するための基本方針(仮称)の創設』の検討が盛り込まれており、土壌汚染に対する措置の実施における温室効果ガスの排出抑制の重要性等についても、この方針の内容として盛り込むことも検討すべきとされています。

小委では今後、各論の検討が進められ、2025年度の夏から秋までに報告を取りまとめる予定となっておりますので、委員の皆様のご意見に注目していきたいと思っています」

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◆暫定目標値を超過した個所でPFAS対策技術の実証へ◆

――有機フッ素化合物(PFAS)への社会的関心が高まり、一般メディアでも盛んに取り上げられるようになっています。

「PFASについては様々な検討課題があります。環境省と国土交通省が共同で実施した『水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査』について、2024年11月及び12月に調査結果を公表したところです。これは、水道事業、水道用水供給事業及び専用水道の令和2年度から令和6年度(令和6年度は9月30日時点)までの検査結果等を取りまとめたものとなっています。

この調査結果は、水質基準逐次改正検討会等における水道水質に関する目標値見直しの検討に活用されています。水道事業では暫定目標値を超過した水源井戸の使用停止や活性炭処理等が進められ、令和6年度(9月末時点)においては、全国の水道による給水人口の98.2%が暫定目標値以下の水の供給を受けているという結果となり、対応が進みました。

PFASを巡っては、2025年2月6日に中央環境審議会水環境・土壌農薬部会「水道水質・衛生管理小委員会(第1回)」及び「人の健康の保護に関する水・土壌環境基準小委員会(第1回)」が開かれ、「水道水におけるPFOS及びPFOA 等に関する検討について」、「公共用水域及び地下水におけるPFOS 及びPFOA に関する検討について」をテーマに審議されました。

「水道水におけるPFOS及びPFOA 等に関する検討」では、法令上の遵守や検査実施が義務づけられる水質基準への引き上げや水質基準値をPFOAとPFOS合計で50ng/L以下とすること等の方針案が了承されました。

一方、公共用水域及び地下水におけるPFOS 及びPFOA に関する検討の報告案では、引き続き、環境中で検出される状況が認められるものの、国民の健康リスクの低減の観点からは、飲み水の安全性を確保するための水道水源から蛇口までの一体的なリスク管理を図ることが重要であり、水道水質基準への位置づけとともに、水道水源等での重点的な環境モニタリングや飲用井戸等での検査促進、指針値等を超過した場合の飲用摂取防止等の取組を講じていくことが適当とし、公共用水域等では当面は指針値として運用していく考えとされています」

――今後、土壌・地下水環境分野におけるPFAS等の取り組みはどのようなものを予定していますか。

「土壌・地下水環境におけるPFASの検討については、2024年度補正予算案では8億8,600万円を計上し、『PFAS対策技術の実証』等を行う予定です。土壌・地下水環境分野だけでなく排水等も対象としたものですが、暫定目標値を超える地下水等[A4]が確認される地域が増えているほか、国内外で様々な濃度低減の対策技術が提案され始めている状況を踏まえ、国内数カ所で対策技術の実証を行う考えです。

実証事業で得た知見や国内外の情報収集等をもとに、ガイドラインを作成するほか、科学的知見に基づくリスクコミュニケーション、ばく露評価を実施するために必要なPFASの一斉分析法の開発、測定等を行っていきたいと思っています」

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◆脱炭素に資する土壌が有する炭素貯留など公益的機能の情報収集等も◆

――環境浄化の分野でも脱炭素化や生物多様性保全等の重要性も指摘されつつあります。土壌・地下水環境分野においてはどのような視点で検討が進んでいるのでしょうか。

「第六次環境基本計画(2024年5月閣議決定)では、自然資本を基盤とした国土のストックとしての価値の向上を図る観点から、『土壌が有する炭素貯留、水源の涵養といった環境上の多様な公益的機能に関して、市街地等も対象にしつつ、より良い地域づくり等に活用しやすい形での情報の収集、整理等を図る』ことが必要と指摘されています。

今後、こうした機能に関する科学的知見等の収集等を進めていくことが必要だと考えています

一方で、土対法は人の健康被害を防止するための法律として制定され、水質汚濁防止法の生活環境項目や水生生物保全項目のような項目はありません。現時点では具体的な制度的な検討には入っていませんが、今後、土壌が有する炭素貯留等の公益的機能についても重要な検討項目だと考えています」

(終わり)

広報「土壌汚染情報局~中小企業・個人事業者が向き合う土壌汚染」~Presented by ECO SEED

中小企業・個人事業主が土壌汚染に対応する時に参考となる情報を掲載していきます。 ※情報は時間経過とともに変わりますので、最新の情報をご確認してください。 ※当サイトで紹介する手順や技術、サービスの情報は、制度に照らし合わせた正当性、調査や対策の正確性等保証をするものではありません。土壌汚染調査・対策を実施する場合は必ず、所在する自治体担当部局、土壌汚染対策法に基づく指定調査機関にご相談ください。

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