【環境DDと土壌汚染特集Part2】環境デュー・デリジェンスにおける土壌汚染調査の現状、ポイント

トランスバリュー・リアルエステートサービス株式会社代表取締役・安田晃氏に聞く

Part1ではデュー・デリジェンス(DD)において環境項目に関心が集まり、環境省も事例集等をまとめていることなどをお伝えしました。Part2では、環境DDの中でも土地の資産価値に大きな影響を与えることから関係者の関心事となる土壌汚染に焦点を当てます。近年、環境DDに伴う土壌汚染調査の依頼が増えているというトランスバリュー・リアルエステートサービス株式会社〈東京都中央区日本橋本町2-6-13〉の安田晃代表取締役に現状や買い手側、売り手側企業におけるポイントなどを聞きました。(エコビジネスライター・名古屋悟)

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◆直接土地の資産評価に繋がる土壌汚染リスク◆

――御社は、地歴調査を柱に土壌汚染調査を請け負っていますが、M&Aを契機とした土壌汚染調査の現状をどう感じていますか。

「M&Aにおける調査は、土壌汚染対策法の地歴調査とは異なり、レポートを行政へ提出する目的ではないため、『発注者の意図や目的、狙いをしっかり把握できているか?』という点がポイントと感じています。環境DDについては、買い手側企業にとってみると、土壌汚染リスクが直接土地の資産評価に繋がっていき、潜在的な土地の減損リスクになることから、きわめて重視していると感じます。

一方で、M&Aの買い手企業、仲介企業、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)のいずれもが、まだ環境DDに不慣れなケースもあり、結果として、財務DD、税務DD、法務DDなど従来から行われてきたDDの経験と実績が多いため、環境DDが後発になっているようにも思います。

その中で、環境DDでは多くの場合、土壌汚染調査ではフェーズ1調査レベルで終了する調査であり、調査会社の中にはフェーズ2調査(ボーリング調査)や土壌汚染対策工事には結びつかないため、積極的には受けたくないという本音も感じることがあります」

◆土壌汚染だけでなく廃棄物等幅広い環境リスクを見る視野の広さ◆

――地歴調査は法令上でも入り口であり広く行われていますが、環境DDにおいて求められる調査の質とは?

「DD期間があらかじめ設定されていることが多く、『限られたDD期間内で、発注者の意図や目的を達することができるかどうか?』が最大のポイントになります。

そのため、開示された資料を短期間で読み込み、追加質疑を行うなど、評価に至るための資料や情報の優先順位を取捨選択し、見極めができるかどうかが重要になります。あまり細部にこだわってしまうと、時間不足に陥ってしまう点が特徴です。また、中間報告がある場合がほとんどですので、最終評価のイメージを持って進めていくことが大切であると思います。

環境DDでは、複数工場を同時に実施するケースが多いですが、工場毎の特徴を把握し、どこにリスクのポイントがあり、そのリスクを把握するためには何が必要で、優先順位の高い資料と低い資料の見極めが大切になります。

また、土壌汚染対策法だけではなく、廃棄物処理法や大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法など環境基本法に係る多岐にわたる理解が必要となってくるため、環境面から視野を広く持って、サイトを見ていく必要があると思います」

◆買い手側が意識するポイント…将来、売却や形質変更等を行う方針かどうか◆

――買い手側企業が意識すべきポイントはどのような点でしょうか。

「株式譲渡契約後、将来、売り手側企業の土地を売却または形質変更(建替え等)を行う方針か否かにより、土壌汚染対策法等の法令を意識したリスク評価も求められてきます。

操業継続を前提とした主工場であれば、売却や操業停止に伴う工場廃止時調査を意識しなくてもよいですが、古い工場や生産効率が低下した工場の場合には、生産拠点の集約等により、近い将来、土地売却が見込まれるものもあり、その場合には、土壌汚染対策法等に基づく調査費用や対策費用なども織り込んでおく必要があります。

環境DDに費やす費用対効果は大きい点もあります。環境DD実施により、顕在化していない土壌汚染リスクの評価見直しにより、場合によっては億円単位で売買価格に反映させることが可能というケースもあります」

◆売り手側の対応…公的届出資料のデータ化等でスピーディーな対応可能に◆

――逆に売り手側が備えるべきポイントはどのような点でしょうか。

「これまでに対応したケースを見ますと、求められる資料やQA数は、財務DD、税務DDや法務DDなどと比べると少ないものの、環境DDの必要資料も決して少なくはなく、また図面類も伴うため、社内で資料の準備にも時間を有しているケースを多く感じます。

あらかじめ準備しておくことは難しいとは感じますが、例えば、行政へ提出した副本である公的届出資料(水質汚濁防止法や下水道法の特定施設設置届出書、消防署への危険物届出書など)の電子データ化を行っておくだけで、スピーディーな対応が可能となることが多いですね。

また、将来、法や条例に基づく土壌汚染状況調査が必要である工場を経営している売り手側にとっては、いずれ必要となる地歴調査の調査内容と重複する情報や資料も多いため、将来のリスク管理資料としても有益であるとの認識を持っていただきたいと思います」

◆地歴調査部門に専門スタッフ多数在籍、汚染想定リスク額もレンジで提示◆

――御社の地歴調査の特徴や今後の環境DDにおける調査への意気込みを教えてください。

「当社の環境DDにおける地歴調査の特徴は大きく3つあります。

まず1点目は地歴調査部門の専門スタッフが多数在籍していることで、同時に多数の案件を対応できることです。

2点目は弊社の主力業務である地歴調査と環境DDでは関連性が強く、多種多様な業界や業種、企業、土地に対して、地歴調査(土壌汚染リスク評価)の実績を有している点です。

また、3点目は汚染想定リスク額を経験や実績に基づき、レンジで提示し、リスクの定量化ニーズにも対応している点です。

最後に、今後の環境DDにおける調査への意気込みについてですが、昨今は経営者の高年齢化や後継者不足による企業の売却(M&A)が増えており、今後もその傾向はしばらく続くものと思います。M&Aにおける環境DDについては、関係者間でも徐々に浸透していく流れが続いていると感じます。

当社は地歴調査・フェーズ1調査に強みを持つ企業として、フェーズ2調査を実施せずに、汚染リスクの大中小を把握したいという関係者間のニーズに対応し、さらに、将来の法条例に係る調査に向けたアドバイザーも行っており、有益なレポートを提出しております。

私自身も都市銀行出身であり、親しい銀行関係者にもM&Aに携わる行員も多く、M&Aプレーヤーの思惑や狙いは十分理解しています。

M&Aにおける環境DDに何かお困りの方や、何をどうして良いか分からないという方からのご相談もお待ちしております」(終わり)


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